スキー場再生にTバーリフトの活用

 スキー場の会計がなかなかWebで見つからないので何ともですが、新潟県魚沼市がスキー場事業特別会計をアップしています。これを見ると魚沼市が経営するスキー場は、小出スキー場、薬師スキー場、大湯温泉スキー場、須原スキー場、大原スキー場の5つで、この5つの会計が計上されています。小出スキー場はペアリフトが3基(800m)で、年毎にばらつきはありますが、1シーズンの使用料が概ね800万~1000万円です。この価格をさのさかスキー場のリフトに転用すると5基(3120m)で4268万円になります。

現在日本ではJバーリフト(単機型)とTバーリフト(2人用)を設置しているスキー場はなくなってきましたが、欧米ではまだ現役で利用されています。設置費用も概算ですが、1000mで機材代のみで5000万円~8000万年と、500m程度のペアリフトの建設費1億5千万円~2億円に比べても1/3程度で済ませることができます。

JバーリフトとTバーリフトは、どちらも電気を動力としています。単機のJバーリフトの最大運転電力は18kW、Tバーリフトの最大運転電力は32kWになります。リフトの電力レベルは、リフトの長さ、特定の消費レベル、および季節的な需要によって決まります。Tバーリフトは、スキーヤーとスノーボーダーの両方が利用することができ、通常3m/s前後で運転されますが、0,75m/sから3,5~4,0m/sまで運転することが可能です。

中部電力のkWh(キロワットアワー)の電気料金で1日8時間、30日間稼働させたと想定すると、1本当たりのリフトの電力が割り出せます。

18kw×8h×30日=消費電力 4,320kWh ×中部 30.57円/kWh= 132,062円/月
32kw×8h×30日=消費電力 7,680kWh ×中部 30.57円/kWh= 234,777円/月

さのさかスキー場のリフトは5本で、それぞれ第6ペアリフト(500m)、第1トリプルリフト(420m)、第2クワッドリフト(930m)、第3クワッドリフト(860m)、第5ペアリフト(410m)です。第5リフトは廃止し、第6と第3(2本)をJバーリフトに、第1と第2をTバーリフトに換装すると、87万円/月ですから3か月間で約270万円の電力に抑えられます。ヘアリフト5本を運用すると3か月間で約8250万円かかってしまいます。ペアリフト1台で550万円/月支出する計算です。

750kw×8h×30日=消費電力 80,000kWh ×中部 30.57円/kWh= 5,502,600円/月

2018-19シーズンのさのさかスキー場の来場者数は2.2万人でした。JバーやTバーリフトへの変更に伴い、リフト代金は3,000円(大人)で計算すると、リフト代の収益は、6,600万円になります。これに駐車場代、レストラン収益、休憩所料金、託児所の利用料、カプセルホテル宿泊料などを計上すると以下のような概算になります。

 
項目 金額 人数 収益
リフト代 ¥3,000 22000人 66,000,000円
駐車場 ¥1,000 5500台 5,500,000円
レストラン ¥800 22000人 17,600,000円
休憩所 ¥1,000 3500人 3,500,000円
託児所 ¥2,000 1400人 2,800,000円
カプセルホテル ¥6,000 10000人 60,000,000円
      89,400,000円
 
項目 支出
燃料費 2,700,000円
総務管理費 7,000,000円
索道事業費 40,000,000円
公債費 30,000,000円
予備費 5,000,000円
  84,700,000円

支出は市が管轄する複数のスキー場のデータから概算して求めたものです。
マーケットとしては、関東圏と東海圏それに関西圏にまたがる立地条件の良さがあるので、フリースタイル、モーグル、日帰り、子連れ、Tバーリフトをキーワードに見直せば、群馬県の片品高原スキー場のように運用できるのではないかと思います。

まずリフトの撤去作業とT/Jバーの設置費用、センターハウスの改修工事(託児所の新設など)、カプセルホテルの建設費などは含まれていません。冬場は改修工事ができないので、それまで運用するか延期して、改修工事に充当するかを考えたほうが良さそうです。

ツェルマットのテオドール氷河(3883m)に位置するリフトはゴンドラ以外はすべてTバーリフトです。標高が高く、風が強いので、Tバーリフトの方が優位なのでしょうが、リフトの考え方を少し変えれば活用できるかもしれません。