SHREDの全天候型レンズCBL2.0ICE

GRATIFY BLACKOUT CBL2.0ICE

ヘルメットの交換は、転倒してMIPが変形した場合は、即交換したほうが良いですが、それ以外は経年劣化の少ない商品で、唯一劣化が懸念される部分は耳当てのジョイント部でしょうか。頭の型に合うヘルメットさえ探すことができれば、心配することはないかもしれません。これに対して、ゴーグルはヘルメットの上からかけるとき、ゴムバンドが伸びて経年劣化すると使えなくなってしまいますし、フレーム裏側のスポンジが痛むとレンズが問題なくても変え替え時期が来てしまいます。これは本当に頭の痛いところです。SDGS的に言えば、フレームとゴムバンドだけ交換できる仕組みがほしいところです。

さて、私はこれまでBurton(バートン)のAnon メラク WaveCel(ヘルメット)とAnonM4シリーズのゴーグルを使っていました。なによりパウダーを滑るときなど、マグネットインターフェイスがついているのでマスクがずり落ちることはなく便利なんですが、雪上でのレッスンではこのマグネットインターフェイスは声がこもり、口の動きが見えなくなるので使いずらくなります。私はマスクを外してレッスンをしています。最近ゴーグルのバンドがかなり伸びてきたので、1枚のレンズで済ませられるゴーグルへの変え替えを考えていました。そこで前からテッドリゲティ(Ted Ligety)が使用しているSHREDのゴーグルとヘルメットに興味があったので、調べてみました。

SHRED.(シュレッド)の共同創業者は、テッド・リゲティとカルロ・サロミ(Carlo Salmini)です。サロミはイタリア出身のエンジニアで、MIT(マサチューセッツ工科大学)で機械工学を学んだ後、スポーツ工学とデザインに情熱を注いでいました。彼らは2006年に出会い、スキー競技の現場で感じた課題を共有したことがきっかけで意気投合し、リゲティのアスリートとしての視点と、サロミのエンジニアリングとデザインの専門性が融合し、SHRED.が誕生しました。ブランドの初期製品は、まさにこの2人のコラボレーションから生まれたものです。ブランドのコンセプトは、「パフォーマンスとスタイルの融合」。スキーやマウンテンバイクなどのアクションスポーツにおいて、選手が最大限の能力を発揮できるよう、機能性とデザイン性を両立させた製品を開発しています。SHRED.は現在、ゴーグルやヘルメットだけでなく、プロテクターやサングラスなども展開し、世界中のアスリートに支持されています。リゲティの競技者としての視点が、製品開発の根幹にあるのがこのブランドの大きな特徴です。

SHREDのSHRED CONTRAST BOOSTING LENS™ 2.0 は、スキーゴーグルレンズにおける「コントラスト強調技術」の最先端を行くものの一つとして知られています。CBL 2.0は、通常のレンズが光を均一に減衰させるのに対し、コントラスト強調レンズは特定の波長の光を選択的にフィルタリングすることで、視覚の「ノイズ」となる特定の青色や緑色の波長をカットし、視覚を鮮明にする赤色や黄色、オレンジ色の波長を透過させるように設計されています。これにより、雪面の凹凸(コブ、溝、氷の塊など)がより際立ち、影や地形の変化が明確に見えるようになります。これは、特に「フラットライト」(曇天や雪が降っている時など、影ができずに雪面がのっぺり見える状態)において非常に重要です。

SHREDがMIT(マサチューセッツ工科大学)との関連を謳っているのは、彼らのレンズに採用されている独自の染料配合技術に由来します。これは、MITの材料科学や光学研究に基づいたもので、特定の波長を精密にフィルタリングするための、非常に複雑で科学的なアプローチが採用されていることを示唆しています。「ALL CONDITIONS Lens Tech System」とは、この根本的なコントラスト強調技術をベースに、透過率(VLT – Visible Light Transmission)やカラーを調整することで、あらゆる天候条件に対応できるレンズラインナップを提供しているシステム全体を指します。つまり、どんな状況でも視認性を最大限に引き出すための統合的なアプローチと言えます。それにコントラスト強調は、雪面からの反射光に含まれる散乱光の一部をフィルタリングするため、自然とグレアを軽減する効果も持ちます。特に、青い光をカットすることで、ギラつきや眩しさを抑え、目の疲労を軽減します。

レンズは大きく3種類に分かれています。特定の天候条件に最適化された透過率(VLT)と色味で分類されます。ICE (通常、VLT 20-40%程度)の特徴は、フラットライト条件を克服し、汎用性の高いレンズ。最もバランスの取れた、多用途な選択肢です。曇天、雪、薄曇り、日差しが安定しない状況、および幅広い天候での一日中スキー。コントラスト強調が最も効果を発揮する条件です。GLACIER (通常、VLT 5-15%程度)の特徴は、春から夏にかけての強い日差しや、高所の雪山での極めて明るい条件に特化したレンズ。非常に低いVLTを持ち、強力なミラーコーティングが施されています。晴天、高山、氷河、強い日差しが照りつける春スキーやスノーボード。眩しさを最大限に軽減し、目の保護を優先します。NIGHTTIME (通常、VLT 60-85%以上)の特徴は、夜間スキーや人工照明下、または非常に暗い曇天・降雪時など、最大限の光透過率が必要な条件に特化したレンズです。ナイター、非常に暗い曇りの日、悪天候で視界が著しく悪い場合に最適化されています。

お勧めは、GRATIFYのCBL2.0ICEです。
実際にかけてみると、かなり視認性が良く気に入っています。

 

【参考】
SHRED
25⁻26_SHRED Catalog
SHRED. | The SHRED. Brand Story (2018)