フッ素入りワックスの使用禁止について

FISレースにおけるフッ素(含むC8フッ化炭素/PFOA)入りワックスの使用禁止が再度延期となり、2023/2024シーズンからの実施となりましたが、SAJ(全日本スキー連盟)は2022/2023シーズンからのフッ素系ワックスの使用禁止の通達(2022/7/11)を出しています。8月31日通知内容の訂正と追加があり、C8/PFOAに限らずフッ素成分を含むすべてのワックスのFISおよびSAJ公認大会での使用を禁止としました。これを受けてSAT(東京都スキー連盟)は、FIS、SAJにならいフッ素成分を含むすべてのワックスを今シーズン(2022/23)より禁止対象にし、C8/PFOAはもちろん、PFOA を含まない C6、C4 タイプ等もフッ素系ワックスについて、すべて対象とするとしました。

禁止の目的は、「フッ素化ワックス、およびこれらのワックス製品を構成するペルフルオロオクタン酸(PFOA)化合物は、環境および健康への悪影響について科学的に研究されています。発癌性などがあり、人体はもちろん自然環境に有害です。スキー場が牧草地であれば夏に牛やヤギなどの牧畜が草と一緒にフッ素化合物を体内に取り込むことや、熱で気化し、人が吸い込むという危険性もあり得ます。具体的な健康への悪影響は、子供の出生体重の減少、糖尿病、または甲状腺代謝の乱れなどがあると言われています。」と記載されています。

そして、FISの決定に従い、SAJもSATもPFOA/C8の含有の有無に関わらず、禁止を指示しています。そして、「買わない」「もらわない」「そばに置かない」を会員間で互いに啓蒙し合い、フッ素系WAXの廃絶に向けて成果につなげていくことを要望しています。

このPFOAとは何なんでしょうか。

PFOAは、ペルフルオロオクタン酸(Perfluorooctanoic acid)の略称で、有機フッ素化合物の一種です。このPFOAの特徴は、水にはほとんど溶けず、界面活性能力が高く、生分解をほぼ受けない性質を持っています。そのため、スキーやスノーボードで使用されるワックスの中には、摩擦を減らしてスピードを出すために、この有機フッ素化合物が競技などで使われてきました。使用が禁止された理由は、PFOAが環境や人体に対して問題視されているPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)に属する化合物だからで、2020年にEUではPFOAの製造、使用は禁止されています。現在スキーワックスでこのPFOAは使われていません。スキーワックスで使われているフッ素は、PFC(ポリフッキサミン)やテフロンで知られているPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)です。しかし、どうもPFOAではないから安全というわけではなさそうです。PEAKSによれば、このPFCですら、環境や人体に深刻な影響を与える可能性があることから、アウトドアブランドのメーカーではPFCフリーへの取り組みが始めているそうです。

こうしてみると、フッ素系のスキーワックスは最終的には使用しない方向で考えなければいけないのは間違いないようですね。その意味では、スキー競技の世界だけではなく、一般のスキーヤーやスノーボーダーも使用しないように啓蒙していく必要がありそうです。併せて、今所持しているこれらのフッ素系スキーワックスの取り扱いについても考えなければいけません。総じてフッ素系ワックスはパラフィン系ワックスに比べて高価なので、即破棄というのは難しい選択になるかもしれません。

とりあえず整理してみると、
①PFOA化合物を含むフッ素系ワックスは使わない
②PFOAを含まないフッ素系ワックスも、使い切ったら買わない
③もしくはすべてのフッ素系ワックスは処分すべきというのであれば処分方法を提示すべき

フッ素系ワックスを処分する方法は、
●固形ワックスは可燃ごみとして処分
●ペースト状のワックスは、紙や布などの可燃物に塗り込み、紙パックなどに入れて捨てる
●液体ワックスは、紙や布などの可燃物に吸い取らせてから乾燥させ、紙パックなどに入れて捨てる
●液体ワックスは、水で溶かしながら下水溝に流す

フッ素系ワックスの処分方法は、車の固形ワックスの処分方法などが参考になりますが、各自治体の廃棄の仕方を参考にすると良いでしょう。

参考