モーグルの整地の再開発

信濃毎日新聞(9/17)に【独自】運営会社が10年間で5度目の交代 白馬さのさかスキー場 不動産関連企業が新規参入の記事が掲載されていました。

再生エネ企業は撤退
 北安曇郡白馬村の白馬さのさかスキー場を巡り、再生可能エネルギー事業などのブルーキャピタルマネジメント(東京)が運営から撤退し、不動産開発事業などのプラネット(同)グループが経営に乗り出したことが16日、分かった。運営会社の変更は過去約10年で5度目となり、ブルー社同様、プラネット社もスキー場経営は未経験。スキー客の低迷や少雪に新型コロナウイルス禍も重なる中、再建に向けた手腕が試される。

インバウント需要の取り込みに成功した八方尾根は、北アルプス連峰の山々に点在するスキー場をひとまとまりのスキーリゾートエリアと見立てて「HAKUBAVALLEY」というブランドを作り、世界中に売り込みをかけています。2017‐18年のコロナ前までは、新雪が豊富で、滞在費やリフト代も安く、村内にシャトルバスを周回させるなどいち早くインバウンドの需要に答えてきた甲斐あって、HAKUBA VALLEYを訪れた外国人スキー客数は、過去最高の33万人を突破しました。全体としては、2017-18シーズンの総来場者数が約155.5万人(前年比約3%増)で、うち、外国人スキー客数は約33万人(前年比約45%増)となり、総来場者数の約21%を外国人が占めているということがわかります。これを見てもわかるように、インバウンドによる急激な増加がもたらされたわけで、地元の観光協会の期待値も上がってきているわけです。併せて北京オリンピックが終わり、中国の富裕層(1.5億人)が日本の深雪を求めて来日しようとしているわけですから、鼻息が荒くなるのも無理はないように思います。

コロナ禍の影響でインバウンドの来場者数はここ3年ほど激減していますが、コロナ感染が終息に向かっていく中で、北海道のニセコ、ルスツや長野県の八方尾根は軒並み欧米並みのリフト料金に値上げをしています。欧米並みに値上げをしてもインバウンドの需要が見込めるか、従来通り日本人をターゲットにしつつインバウンドの需要に期待をするが分かれ道のように思えます。私見ですが、欧米並みの価格になると滞在に数は減少し、富裕層しか訪れなくなるでしょう。とはいえ雪の降る国ですから、比較的安い価格帯のスキー場へインバウンドがシフトしていくことは予想されます。

観光庁の国内観光旅行の動向に関する調査結果を見ると、国内スキー場全般で日本人のスキー客の85%は日帰りで、子連れ客が60%を占めています。比較的小規模のスキー場は、前提条件を日帰り客と子連れ客に焦点を合わせて設計するのが良いでしょう。例えば、日帰り客の場合は仮眠室の充実(カプセルホテル含む)やレストランと独立した休憩所(ブーツが脱げる)、室内大規模子供託児所(IKEAsmalandやHUGHUGなど)の充実などが必要になってきます。

さのさかスキー場ですが、豊かな森と湖に囲まれた白馬さのさかスキー場。全体の80%が初心~中級のバーンということや、冬の湖を真正面に見てすべることが出来るコースもあり、ゆっくりとスキーを楽しみたい人やファミリーに人気のスキー場です。また、白馬さのさかスキー場には国内屈指のモーグルバーンも整備されています。

フリースタイルやモーグルの選手を養成するためには、小学生のころから体験学習を通じて、育成していかなければいけません。その意味では、ターゲットとなる日帰り客や子連れ客と相反しません。さのさかスキー場のレガシーでもある、モーグルを中心に、フリースタイル競技を対象にしたスキー場へシフトしていけるかが小さなスキー場が生き延びれるかどうかの選択のように思います。

リフトは再整備してロープトウに切りかえ、モーグル用のコース整備に特化させていきます。もちろんプロのモーグラ―が常駐し、経済的基礎を作れる環境整備をしていくことも大切ですね。例えばペンシルバニア州のCopper Mountain の Woodwardのような室内練習場やジャンプ台付きのプールの設置など、本格的なモーグル競技へスムーズに移行できる環境を作る等、年間を通じてモーグルに関われる環境整備にお金をかけたほうが良いかもしれません。エアに強い施設を周辺に作り、対象競技をスキー、スノーボード、スケートボードのフリースタイルそれにモーグル競技をメインに置きます。周辺の学校と提携し、小学校から高校までの全寮制一貫教育をインターナショナルスクールとし、将来競技選手以外の選択肢を作っておく、英語が喋れて、スノースポーツビジネスで仕事ができる人材を育成これらが相乗的に作用すると、面白いスキー場になりそうです。アメリカのテニスアカデミ―のような機能が持たせられると良いですね。

さてさのさかスキー場の改修工事ですが、オペレーションコストで群を抜いているJバーリフトやTバーリフトを復活させるのも一つの手です。第6ペアリフト、第1トリプルリフトはJバーリフトへ、第2クワッドリフトはTバーリフトへ、第3クワッドリフトはペアリフトへ変更します。第5ペアリフトは廃止します。そうすると回収工事費用は3~4億円に抑えることができます。

夏場はスキー場の斜面にアウトドアキャンプを配置し、湖周辺にはコテージを配置します。山岳地方の託児所ですから、クライミングやアスレチックをベースにすると良さそうです。子供が楽しく遊べるよう、子供を中心としたアスレチック(グリーニア/六甲山アスレチック)やフォレストアドベンチャー、カヤックや釣りなどを用意します。室内練習場や提携校の練習場として活用できれば、年間を通じて稼働するスキー場に生まれ変わることができると考えます。

いずれにしてもスキー場単体での再建を考えるより、マーケットを読み取りながら持続可能なビジネスモデルを作ることが大切ではないでしょうか。モーグルの整地として残しておいてほしいスキー場です。