キュンパスで行く夏油温泉スキー場日帰り計画

 岩手県の夏油温泉スキー場は、非圧雪コースを豊富に持つ国内でも数少ないスキー場です。このスキー場の特徴は、滑り手に必要な情報を常に発信しているところが素晴らしく、ライブカメラの情報やリフト運航状況に加えて、コース開放状況、その日のコンディションの詳細をパトロールが毎日更新しています。

 ぜひ行ってみたいスキー場なのですが、如何せん東京から岩手県までの距離が約500㎞、八王子に住んでいると約530㎞ほどあり、滞在をして滑るとなるとかなりの出費を覚悟しなければいけません。そのため、東京駅や大宮駅から新幹線を利用した利用計画が紹介されていますが、乗車券8,000円、指定席6,000円で片道14,000円、往復28,000円かかるのです。それに電車での移動ではスキーを一式手持ちで乗車できませんので、宅配便で送らなければいけなくなります。クロネコヤマトのオールインワンスキー宅急便を利用すると、往復で7,258円かかってしまいます。すると往復新幹線代とスキー宅急便代を合わせるだけで、35,000円もかかってしまうわけです。

 車で東京から夏油温泉スキー場まで行くとなると、高速料金が往復で約20,000円、ガソリン代が約15,000円、なので36,000円前後かかります。[ドラ割]ウィンターパス2024 夏油プラン(仙台発着)を利用すれば、高速料金が5000円ほど抑えられますが、それでも31,000円ほどかかります。もちろん複数人で行けば割り勘できますが、片道約6時間の長旅になります。

 これにセンターのスキーヤーズベッドを利用し、リフト券を購入すると3日間滑ると6万円を超えてくるわけです。この金額は北海道へスキーに行く料金と同額です。

 そこでJR東日本が2023年12月に発売したばかりの新商品、新幹線・特急列車などの自由席を含むフリーエリア内が1日乗り放題プランの「キュンパス」で考えてみました。利用エリアにJR東日本前線とありますから、東京駅から岩手県北上駅までは対象路線になります。販売期間は2024年1月14日(日)~2月29日(木)えきねっと限定で、利用開始日の1ヵ月前から14日前までの発売となります。従って設定期間は、2024年2月14日(水)~3月14日(木)平日限定という条件が付きますが、販売価格は10,000円です。キュンパスを使えば日帰りが条件になりますが、10,000円で東京から岩手県まで往復できるというわけです。

新幹線の利用に際しては以下の通りです。
06時04分 東京駅発
08時54分 北上駅着
09時10分 北上駅発(送迎バス)
10時00分 スキー場着

16時30分 スキー場発(送迎バス)
17時20分 北上駅着
18時15分 北上駅発(新幹線)
21時12分 東京駅着

 当然新幹線で行きますので、スキーは現地でレンタルします。夏油温泉スキー場は非圧雪エリアの深雪が売りなのでレンタルにもファットスキーがあります。新幹線に積み込むのは、スキーウェアにヘルメット、グローブ、ゴーグルそれにスキーブーツです。

 荷物を東京駅まで運ぶのは、在来線で東京駅まで行くのも良し、車で東京駅八重洲パーキングに駐車しても良いでしょう。東京駅八重洲パーキングを利用するときは、旅駐得々プランを活用すれば、1日5,000円で駐車ができます。

 キュンパスを利用し、北上駅から無料送迎バスで夏油温泉スキー場へ行き、スキー場で着替えて滑り始めます。残念ながらこのプランでは、朝一番のファーストトラックの乗車ができないことでしょうか。朝10時過ぎから、ファットスキーをレンタル(2回交換可)し、16時まで滑って、無料送迎バスで北上駅に向かいます。17時20分に北上駅に到着し、18時15分の新幹線で東京へ戻ります。21時過ぎには東京駅に到着します。東京駅をベースに在来線を利用すれば、シニア券(3,500円早割)を利用すれば、19,300円で夏油温泉スキー場の非圧雪を体験することができます。これはお得なプランかもしれません。

 今季は3月14日までしかキュンパスが使えませんが、来年もこのサービスが続くことを期待したいと思います。

旅駐得々プラン           5,000円
キュンパス            10,000円
リフト券(早割シニア券)      3,500円
レンタルスキー(パウダー用)    4,600円
レンタルストック(パウダー用)   1,200円
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東京八重洲パーキング利用の場合、 24,300円
大宮駅駐車場を利用した場合    20,500円
電車で利用した場合        19,300円

キュンパス https://www.jreast.co.jp/heijitsutabi/kyunpass/
旅駐得々プラン https://parking.yaechika.com/parking_tabichu.html
夏油温泉スキー場レンタル https://www.getokogen.com/winter/02rental/index.html

 

JAPOWイン北海道ルスツ編

 昨夜はまったく積もっていなかったので、7時に朝食を済ませて、7時45分モイワを出発、ルスツリゾートのイーストステーションまで約30㎞を約40分で移動、お昼ご飯はセブンイレブンでスチックバーを1本バッグに入れて、シニア券5時間券がWeb購入だと6,000円で、チケット売り場で買うと7,200円だったので、早速駐車場で手続き開始、無事にメールが届き、QRコードが入手できたので、TICKET PICK-UP BOXで発見してもらいました。

 今日の作戦は、当然外国人が多いので、彼らはツリーランに興じるだろうと、それもイゾラへ向かうだろうと予想しました。当然のことながらイースト第一ペアリフトは激混みだったので、イーストゴンドラ2号線でイーストの頂上へ向かいました。このゴンドラは今まで乗っていなかったんですよね。そしてスーパーイーストコース◆◆へ、コブが隠れてはいましたが、雪がモイワに比べて軽く15㎝程かぶっていたので、1本目の急斜面から雪質に感動でした。

 そのままフリコ沢を降りて、イゾラ第2クワッドリフトに乗り、イゾラグランコースをカフェテリアイゾラ2000のゴンドラ乗り場まで滑りました。皆さんイゾラスティームボードやヘブンリーコースそれに林間コースに流れていたのか、人もまばらで、圧雪ラインが残ったままの状態でいっきに下までのノンストップでした。気持ちよすぎです。

次にイゾラゴンドラで頂上まで行き、スティームボードAコースへ、朝一番は圧雪バーンのままで滑りごたえ満点でした。

次にヘブンリーキャニオンコース、これもいままで滑れなかったコースで気になっていたので、上から攻めてみました。降雪の後はパウダー三昧の場所になりそうですね。

 頂上からいままで滑れなかったヘブンリーキャニオンコース◆ここも荒れてはいましたが、雪が柔らかく難所で気持ちよかったです。再度イゾラ第3クワッドリフトで上がり、次はヘブンリースピリットコース◆を攻め、最後にイゾラ第4クワッドリフトで上がり、ヘブンリーリッジBコースをこれまたノンストップで滑りました。イゾラグランコースは午前中は最高のコンディションでした。イゾラDコースも一枚バーンで、このあとアクロス第2ペアでイーストに戻り、ビバルディコースとフーボルコース(初級コース)これがまったく荒らされてなくカービング三昧でした。延べ12本、良く滑りました。

 12時過ぎころから吹雪き始めたので、早めに切り上げ、15時30分に新千歳空港へ、チャックインしようとしたら20時30分の便は欠航扱い、10分後の16時20分発羽田行きなら変更可能ということで、急遽予定を切り上げ、飛行機に飛び乗りました。無事に帰れて来れて良かったです。5便欠航で残りは出発遅れになっていますね。

 スノーボードはボードの性質上滑走速度域がある程度制限されるので、圧雪バーンでカービングをさせるよりは、ツリーランのように浮遊感を味わうほうが楽しいんだろうと思います。フリースタイルのボードでカービングをさせるというのは、ファットスキーでカービングさせるようなものでしょうか。彼らは林の中を好む性質があるのかもしれません。ルスツリゾートスキー場はほぼ60%~70%が外国人で、アルペンスキーを履いている人を今回見ることができませんでした。アバランチの装備をして滑走禁止エリアを滑っていました。外国人が北海道に求めるスキー場はパウダーやツリーランなんですね。カービングスキーではありません。楽しみ方の違いがハッキリと見えてきました。それから驚いたのは、スイス人やイタリア人の観光客がスキーをしに北海道に来ています。スイス~~氷河スキー場まであるのにパウダーが滑れなくなっているのでしょうか。それから中国人の滑れる観光客も着実に増えてきていますね。まだレベルは高くないですし、ツリーランなどはしていませんが、増えてきていますね。
 私たちと違って、オーストラリア人をはじめとする外国人の休暇は10日間近くあります。なので低気圧が通り過ぎた後のパウダーがその10日間のどこかで来るんですね。滞在中にパウダーが滑れるわけです。だから何度も来るんですね。少しわかってきました。
 彼らからすれば「アルペンスキー競技?カービング?どこでやるの?だれが?」それより「ノンストップで1~2km滑る方が楽しくない?」「急斜面のパウダーを滑る方が楽しくない?」「ツリーラン楽しいよ!」ちゃんとアバランチの装備をして滑ってるんですね。
 今日ルスツリゾートでリフト本数12本以上約30㎞、全長1.2㎞~2.8㎞をノンストップで滑る気持ち良さは、内地ではなかなか味わえないですが、スキーの考え方を見直す必要があるかもしれません。

JAPOWイン北海道ニセコモイワ編

 恒例の北海道深雪一人旅を敢行しました。スキー場周辺の価格が高騰し、外食では太刀打ちできなくなってきているので、今年は電子電磁で使えるお弁当箱を持参し実施することにしました。

 朝3時に起きて、4時30分に羽田空港へ5時15分からANAのチェックインカウンターを通過して、予約した席の列だけなぜか誰も乗らず1時間30分ほど熟睡できました。レンタカーは今回ホンダのN-BOXで基本前輪駆動で滑ると4WDになるんだとか、しかし最低地上高も少し高く、何が良いかというと中が広く着替えも楽々だったということです。ただし167㎝の板が補助席をたたまないと詰めなかったことでしょうか。8時30分定刻で到着、レンタカーを借りて9時30分に空港を出て、ニセコモイワまで2時間でした。

 到着後、ロッジ834で宿泊割引券のことを質問に行くと、すぐにチェックインさせてくれて、カードキーをセンターで提示するとリフト券が購入できました。シニア券より安い5,000円でした。ここも外国人占有率は60%を超えています。

リフトの営業時間が15時30分までで3時間ほどしかなかったので、ロッジ前にやきいも屋が出店していたので小さめを1本500円で昼ご飯代わりに。白樺コースで足慣らしをしたらジャイアントコースへ、さすがに朝のうちに新雪は食われていましたが下半分の圧雪状態は悪くなかったです。明日に備えて、クワッドリフトであがり3本ほど林間コースを下見してきました。公表は500mですが、宝台樹のダウンヒルのツリーラン版ですね。いや~さすがに正月明けから滑っていなかったので足に効きました。14時過ぎから吹雪始めたので、荷物をロッジ834に入れて今日は終了です。明日積もっていると良いのですが。

 ロッジ834の朝食は外国人90%、ビレッジやアンヌプリは外国人だらけで落ち着かないのでモイワで滑っているという方が来ているようです。朝食を食べて朝一番のリフトに並びます。冬型の気圧配置が続いているので、時折日はさしますが、雪雲が覆い夕方になると吹雪始めます。朝はまずセンターでロッジ834のルームキーを見せると宿泊割引でリフト券が購入できます。次にロッジから板を持ち出し第一ペアリフト前にならびます。さすがに外国人のパウダー狙いは多いです。9時運転開始のクワッドリフトには30人近い人が、あ~日本時間の平日はたぶん北海道のスキー場には通用しないのでしょう。メインの白樺コースへ流れていきます。昨日のクワッド沿いのコースは踏まれていなかったので、私は白樺コースにはいかず、この写真のクワッドの右側から入るコースをを1本いただきました。30度以上はあるかと思いますが、途中までよかったです。

 白樺コースが1.7kmで、ジャイアントコースが1,5kmですか~湿雪の深雪を3本滑ったらかなり足に来ました。ターン前半から雪の中に板を押し込めると楽にターンできますが、ターン後半に抑えようとするとダメですね。パウダーオンリーだと3時間が限界でしょうか、今日はお昼をはさんで4時間でギブでした。お昼にモイワ食堂に行き、チケット売り場の前まで行ったのですが….ラーメンが1,800円、かつ丼が2,000円の表示を見て退散してしまいました。(笑)代わりに、昨日ロッジモイワ834のそばのキッチンカーで焼き芋を売っていた(高橋さん)ので、今日もおじゃましました。小さめの焼き芋で500円なので助かりました。モイワ食堂ではスイスからの観光客が、ロッジモイワ834には今日イタリア人が入ってきました。オーストラリア人は確かに多いですが、欧州からも来てるんですね。昨年なかった光景は、中国人のスキーヤーとボーダーが10%ほど出現してきています。それも普通に滑れる中国人です。今後増えてくるでしょうね。

各スキー場のライブ配信

今シーズンは暖冬の影響で日本海側では降雪が見られるものの長野県南部や群馬県にはまとまった雪が降っていません。そこでライブ配信をしているスキー場をまとめてみました。そのスキー場にどれだけの雪が降り、どのリフトが動いているのか、目で確かめてみるのも良いでしょう。各スキー場の索道関係者の方々は雪づくりにご苦労されていると思います。全国各地のスキー場に雪が降ることを願っています。

かたしな高原スキー場
【公 式】https://katashinakogen.co.jp/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=74Rs8vxkpyo

ホワイトワールド尾瀬岩鞍スキー場
【公 式】https://www.oze-iwakura.co.jp/ski/
【ライブ】https://www.oze-iwakura.co.jp/ski/slopeguide/live/

丸沼高原スキー場
【公 式】https://www.marunuma.jp/winter/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=cqvEOhOzN2o

ほうだいぎスキー場
【公 式】https://hodaigi.jp/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=itDs_8I_JKk

川場スキー場
【公 式】https://www.kawaba.co.jp/gelande/
【ライブ】https://www.kawaba.co.jp/live-camera/

札幌国際スキー場
【公 式】https://www.sapporo-kokusai.jp/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=k1s9e3YsjDc

ニセコモイワスキー場
【公 式】https://niseko-moiwa.jp/ja/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=slmi00QnDA8

夏油温泉スキー場
【公 式】https://www.getokogen.com/winter/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=Wf9Gs2bamLE

車山高原スカイパークスキー場
【公 式】https://winter.kurumayama-skypark.com/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=R9ynSO2D5_g

ブランシュたかやまスキー場(静止画)
【公 式】https://blanche-ski.com/
【ライブ】https://office.nagawa.ne.jp/img/blanche.jpg

ロッテアライスキー場
【公 式】https://www.lottehotel.com/arai-resort/ja.html/
【ライブ】https://www.lottehotel.com/arai-resort/ja/ski/live-camera.html

軽井沢プリンスホテルスキー場
【公 式】https://www.princehotels.co.jp/ski/karuizawa/winter/
【ライブ】https://www.youtube.com/watch?v=vH6w1vrGTlE

かぐらスキー場
【公 式】https://www.princehotels.co.jp/ski/kagura/winter/
【ライブ】https://www.princehotels.co.jp/ski/kagura/livecamera/

アルペンスキー技術のロジック

 アルペンスキー技術の基本は何でしょうか。現在の選手の滑走技術は「いかに『ターニングポール(ターン内側のポール)』に近付いて最も短距離に滑走し、かつタイムを短縮するか」という方向性を極めようとしています。

日本の元アルペンスキー選手の平澤岳は、2013年4月11日スキーヤーGAKの「日本のテクニック・うそほんと チルドレンレーサーのために」の中で、「基本となるテクニックとして、最速ラインを通るために、方向を変えるとき、ターンをするわけだが、そのターン弧をより小さくすることで、直線が増え、タイムを短縮できる」と指摘しています。そして、「小さなターン弧を作るためには、板をたわませなければならず、たわませるためには上下等を使って、トランポリンのように板をしならせる必要がある」と解説しています。2017年3月31日に同じスキーヤーGAK「スキーのテクニックについて思うことと警笛」の中でも、上下動の重要性や板をたわませることも書き込んでいます。

これらをまとめてみると以下の通りです。

  • ターン弧を小さくして向きを変える
  • ターン弧を小さくするためには、板をたわませる
  • 板をたわませるために上下動をしっかりと使う
  • エッジングはからだ全体をターン内側に傾けて、膝は正面を向いて屈伸運動をしているように使う(膝の動く方向を変えない)
  • ターンとターンの間はより多くの体重を板に載せたいので立ち上がる
  • ターン終了時に外傾の姿勢から、くの字姿勢を維持したまま思い切り立ち上がれば、谷側に立ち上がる意識をしなくても、体は自然と谷側に立ち上がる

 アルペン競技選手の基礎として、Tomnaticは「Lateral Balance & Transitions(左右のバランスと切りかえ)」について掲載しています。この中で、スキーレーサーたちがターンの各段階を理解し、効果的に滑走するための概念として、Initiation(イニシエーション)、Apex(エイペックス)、Completion(コンプリーション)、Inflection(インフレクション)などの用語用語について詳しく説明します。

■Initiation(イニシエーション):日本語訳: 開始

“Initiation”は、スキーのターンにおいて使われる用語で、ターンを始めるためのプロセスや動作を指します。スキーのターンは、滑走中に方向を変える必要があるときに行われます。Initiationのプロセスは、谷回りに入るためにも適応されます。まず谷回りに入る前に、スキーヤーは次のターンの方向を決定します。そしてターンを始める際には、体重を新しくターンを始める方向に移動させ、次のApexへ移行していきます。

■Apex(エイペックス):日本語訳: 頂点、最高点
 “Apex”とは、ターンの最高点または、最大の曲がりを示す言葉です。言い換えると、最も除雪抵抗の大きな局面をApexとして捉えることも理解できます。ターンの中での最高点や板が最も曲がった状態では、スキーが曲がる方向に対して最も大きな角度で傾きます。この局面では、除雪抵抗が大きくなり、スキーヤーが滑走方向を変えるために必要な力が発生します。スキーヤーは効果的に旋回半径を短縮し、コースをより迅速に、かつ効果的に進むことができます。これは特にレースやテクニカルなトレイルで重要であり、スキーヤーが最速でコースを滑り降りるためのテクニックの一部です。

■Completion(コンプレーション):日本語訳: 完了、終了
 “Completion”とは、ターンが終わり、滑走が次の動作に移る段階を指します。スキーレーサーはApexから離れ、次のターンに向けて調整を行います。重心の進路が、足の進路から外れ始めます。Completionは、次のターンへのシームレスな移行を可能にし、効果的なラインを維持するのに重要です。

■Inflection(インフレクション):日本語訳: 屈曲、湾曲
 “Inflection”とは、ターンの方向を切り替える局面や動きの変化が生じる場所を指します。スキーレーサーはApexを通過し、滑走ラインから抜け出した後で、滑走ラインを変更して次のターンに向けて調整します。このとき、重心と足の軌跡は交差します。この段階では、一つのターンから次のターンへと滑走方向を変える瞬間や場面、エッジングや体重移動が変わる局面を示します。Inflectionが正確に行われると、次のターンへのスムーズな移行が可能となります。


 福井大学の清水史郎先生のスキーロボットからもいろいろ学べます。ロボットのターンには、上下等を使って板を徐々にたわませる人間の運動はできていませんが、受動的なつまり、重心を内側に入れて、板にサイドカーブがあれば、ターンをして滑り始めます。

スキーロボットの動きを見ると明らかで、アルペンスキーの場合は外足の伸展と内足の屈曲動作で重心が内側に傾き、スキーのサイドカーブでターンをはじめます。一方、テレマークスキーの場合は、内足の後ろに引くことでエッジを立て、スキーを内側に倒していきます。内スキーの外側のエッジで早く角づけができるのは、このテレマークスキーです。アルペンスキーの場合は、外スキーを伸展(荷重)しながら内側のエッジで角づけします。いずれも、重心をターン内側に移動して内傾角を作り、重力と雪面からの抗力(反力)の合力ベクトル(向心力)により、見かけの力としての遠心力に対処していきます。

もしアルペンスキー技術をテーマに、より速く滑る技術を求めているのであれば、大きなテーマは「Apexのコントロール」で、具体的には「どのように両方のスキー板をたわませて板を走らせるか」でしょうか。そのためには上下動を使い、スキーに体重を乗せる仕組みを学ぶことが上達の秘訣と言えそうです。

<参考>
平澤岳「基本となるテクニック」:https://gakuskix.exblog.jp/19194849/
平澤岳「スキーのテクニックについて思うことと警笛」: https://gakuskix.exblog.jp/27685298

清水史郎(福井大学)「スキーロボット(ski robot)」:https://www.youtube.com/watch?v=kD7gTbtwWJk&t=204s
Lateral Balance & Transitions The Cornerstones of Advanced Skiing Uploaded by Tomnatic
https://www.scribd.com/document/182284825/Transitions-pdf




Ted Ligety GSターンの解説

 伝説のフリースタイルスキーヤー、ジョニー・モーズリーと “ミスターGS “テッド・リゲティの最近のインスタグラムライブインタビューをしたときのトークの中で、テッドのGSターンの解説が載っていました。

Ted Ligety GS turn… insights from the legend himself!
by Fede Wenzel | Oct 9, 2022 | Ski Technique | 2 comments
https://fedewenzelski.com/ted-ligety-gs-turn-insights-from-the-legend-himself/

テッド・リゲティが自身の滑り方を明かしたのです。
■100%外足に荷重
まず大前提が外側のスキーであるということ、外スキーが王様だと言っています。
「外足と内足の割合が何%かなんて考えたことはないが、100%外足に体重がかかっているんだ。」「間違いなく、アウトサイドスキーの方がいいんだ。」ジョニーモズリーもまったく同意見でした。

■内足に体重をかけずに傾ける
ターンの始めに内足を後ろに引く「ターンの始めに内足を後ろに引くのは、内足に体重をかけず傾けるためだ。その方法は、ターンの終わりに、古い外側の足をハムストリングで引っ張ることだ。」

■地面から角度を作る「ヒップドラッグ」
「ターンはいつも、足首、膝、腰の順で始める。」
「すべては地面から始まる。地面から角度を作っていくんだ。」
「腰を地面につけようとはしない。」
「腰が地面に着くのは、ターンのトップで外脚を伸ばす/押すからだ。」「私が高いエッジアングルを作るには、腰を地面に引きずり込む必要がある。それが僕の解剖学的構造なんだ。ワールドカップに出場する他の選手たちは、股関節を地面に近づける必要はない。でも、僕はエッジアングルを得るために、腰を入れる必要があるんだ。」

【解説】
 最後に彼は「スキーテクニックはスキーヤーの解剖学的構造に合わせて調整される。」と言っており、「スキーヤーのからだは少しづつ違うから真似しようとしてもうまくいかない。」ので自分の感覚が誰にでも適応されるかというとそうではないと言っています。とはいえ、GSターンという大前提がありますが、「100%外足に体重がかかる」ように滑ること、次に「内足に体重をかけずに傾ける」Ted Ligetyは一つの手段として、「Hip Drag(ヒップドラッグ)」を使っています。内膝を壊さないように、それでいて同じ角度に傾けるのは難しい技ですが、すでに同じような滑り方をしている方も出てきていますので、参考にしたいです。SLの板でも送り出し運動が連続してくると、スキーを後ろに引く感覚が出てきます。このあたりにヒントが隠されているのではないでしょうか。

 

 


参考
The New York Times
https://www.youtube.com/watch?v=Ga-6wy0Nboo&t=83s

Ted Ligety Carving Follow Cam
https://www.youtube.com/watch?v=JlpeSha0BDI

Ted Ligety – Carving Master
https://www.youtube.com/watch?v=hty-chM-7jw

Learn to carve with Ted Ligety
https://www.youtube.com/watch?v=oOgtn5ZGzTw

How to Execute the Perfect Ski Turn | Outside Watch
https://www.youtube.com/watch?v=1VOu33DLXrw

センターポジションって何?

 今年もオンデマンド形式で指導者研修会理論講習を視聴し、2023年度SAJ指導者研修会実技講習会を受講してきました。昨年は「腰高のポジション」がテーマで、今年は「センターポジション」が「ターン前半のポジショニング」の中で出てきます。解説の中で、「全身をリラックスした状態で、自分の体重を素直にスキーに預けられるポジション」をセンターポジションといいます。この表記の仕方だと、これが定義になります。しかし定義とは、「物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること」です。ここでいう「全身をリラックスさせる」や「自分の体重を素直にスキーに預ける」は非常に抽象的な表現で、明確に他と区別することができません。

 ブーツのタンを前に押して体重をかけることでスキーが切れていると思い込んでいるスキーヤーやズレの少ないターン弧を作るためにスキーをたわませることのできないスキーヤーを見て、こうした言葉を使って表現したのかもしれませんが、最初に解説しているように、ターン運動の要素について説明をしているわけではなく、パラレルターンの習熟度を高めるために必要なポイントとして、ポジショニング、エッジング、荷重動作に注目したと言っているのであれば、ひとつの考え方であって、何も言うことはないことになります。
 しかし本来であれば、ターン運動の要素について研修すべきで、その意味では「荷重」「角づけ」「切りかえ」の運動要素について解説した方が誤解を生まなくて良いように思います。

 もうひとつ気になる点は、仮に「パラレルターンの習熟度を高めるために必要なポイントとして、ポジショニング、エッジング、荷重動作に注目した」と説明していますが、ターンのどのタイミングで、どの場所を、どんな環境条件で雪面に対して運動を働きかけるのかについて解説するときに、外力の得にくい緩斜面や低速域で説明しようとするあまり、無理やりからだを動かしたり、脚を折り曲げたりして師範しているところです。これは間違った運動を伝えることになるのでやめた方が良いでしょう。

 例えば、「センターポジション」の説明は、「スキーの真ん中を踏む」とか「ターン中、センターポジションをキープする」などと現場で伝達されていますが、「荷重」という言葉で済ませることができます。岡部洋一(2017.2.23)は 「スキーの科学とスノーボードの科学」の中で、「人間が板を押すことを荷重といい、板を押す力の作用点を通り、板を押す力のベクトルの方向をとる線を荷重軸という。」と述べています。荷重軸は板を押す力の作用点を通り、板を押す力のベクトルの方向をとる線のことなので、重心も軸線にあります。この荷重軸が壊れるときは、ターンは成立せず転倒します。従って荷重軸を作ることでターンが成り立つので、荷重の仕方をTPOに応じて確認すれば良いことになります。 

 例えば、エッジングについても同様で、「外脚の内旋、内脚の外旋に、上下動を組み合わせてエッジングをコントロールする」と定義づけています。エッジングとは「スキー板のエッジを雪面に立てることで、雪面との摩擦を増やし、スキー板をコントロールする技術」のことで、板をたわませるための技術です。からだの操作で説明すると滑走条件が変わると説明できなくなるのでやめた方が良いでしょう。

 例えば、荷重変化も同様で、「スキーに体重を預けたり、戻したりする動作」としていますが、ターン運動で説明すると「切りかえ」で説明した方が簡単です。

 雪上での実技研修を見ていると、緩斜面や低速域で「パラレルターンの習熟度を高めるために必要なポイント」を実践しようとして、無理やりからだを沈み込ませたり、膝を山側に折り曲げたり、外力が得にくい低速で無理やり外傾を作るのは、誤った解釈につながる恐れが出てくるように思えます。雪アリ県の研修会ならスキー学校の先生方名が多いので問題ないかもしれませんが、雪ナシ県では超高齢化が進んでいるので、なかなか若い人たちと同じ動きができなくなってきています。年齢や体力に応じた習熟度の高いパラレルターンの提案が必要なのではないでしょうか。

参考
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https://kotobank.jp/
デジタル大辞泉
てい‐ぎ【定義】[名](スル)1 物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。
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精選版 日本国語大辞典
ポジショニング
〘名〙 (positioning)① 適当な場所に置くこと。位置を定めること。② スポーツで、攻撃や守備などの態勢の適切な位置どり。

あなたは加圧派それとも保温派

スキーウエアの下に着るアンダータイツですが、足首までのものをタイツとかレギンスと呼んだりしています。膝下ぐらいのものはスパッツと呼ばれています。

いつ頃からアンダータイツは使われていたのかというと19世紀末のヨーロッパ頃からだという記述が複数の文献に残されています。当時のスキーは、まだ冬山での狩猟や移動手段として行われており、防寒対策は十分ではなかったので、ウールのタイツやパンツを重ね着して、防寒性を高めるようにしたのが始まりのようです。

20世紀に入ると、スキーヤーの間で、より快適にスキーを楽しむための工夫が始まりました。その一つが、アンダータイツの素材の改良です。ウールからナイロンやポリエステルなどの化学繊維に切り替わると、吸汗性や速乾性、伸縮性に優れたアンダーウェアが開発されました。また、体にフィットする立体裁断や、保温性と通気性を両立した素材の採用など、機能面の向上も進みました。1960年代には、フリースなどの化学繊維の登場により、アンダーウェアの保温性がさらに高まりました。また、1980年代からは、ストレッチ性や吸汗速乾性に優れたアンダーウェアが普及し始めました。1990年代以降は、女性用アンダーウェアの開発が進みました。女性の体型に合わせて設計されたアンダーウェアは、フィット感や動きやすさが向上し、女性スキーヤーの間で人気を集めています。2000年代以降は、機能性とファッション性を兼ね備えたアンダーウェアが登場しています。保温性や通気性、伸縮性に加えて、デザイン性にも優れたアンダーウェアは、スキーヤーの間で新たなトレンドとなっています。

テーピングの理論がアンダータイツやインナーパンツに取り入れられたのは、1990年代後半から2000年代初頭にかけてです。日本ではワコールから2008年にCWXが発売され、以降多くのアスリートやスポーツ愛好家に指示されてきています。近年では、環境への配慮から、リサイクル素材を使用したアンダーウェアも開発されています。また、抗菌防臭機能や消臭機能、UVカット機能などを備えたアンダーウェアも登場しています。

傾向として、スキーのアンダータイツは、競技性が高くなるにしたがって加圧力が高くなり、サポート性に優れてきます。しかしその分、保温性は阻害されやすくなりますし、着脱にも時間がかかります。そしてアンダーパンツなので主に下肢に商品が限定されてしまいがちです。一方、スキーというカテゴリーから離れて、登山というカテゴリーで見てみると、山を登るので、軽量で保温性と通気性が大前提で、汗で体が冷えないように吸汗性や速乾性に優れ、動きを妨げない伸縮性があることが求められます。それと上下の下着が対象になります。



最近はイタリア製のmicoを愛用していたのですが、極寒冷地対応のベースレイヤーがほしいと探していました。高齢化してくると、競技特性を重視するのもよいですが、長時間加圧すると疲労が蓄積しやすくなります。それより、むしろ下半身だけではなく上半身も「寒くない、動きやすい、軽い」などの条件がクリアされる方が、よりスキーを楽しむ時間が長くなりそうです。

そこでスキーウェアの下に着るベースレイヤーとして今回ご紹介するのが、ひだまり本舗のエベレストプロです。創業者の山口和男氏が、寒冷地の作業現場で働く従業員の冷え対策を目的に、1枚で保温性の高い肌着を開発できないか検討し、2012年に、3重構造の生地で丁寧に編み上げ、キルトウェーブ加工(カシミアの様な柔らかい肌触りが特長)を施すことで3つの生地の間に空気層を作り、冷気を通さず体温を蓄え、ぬくもりを保つ「エベレスト」が生まれました。

エベレストプロのハイネックは、ベースレイヤーとしての下着として使い、寒冷地ではミッドレイヤーのダウンを羽織って、撥水性のあるアウターを着ることもできれば、アウターがダウンの場合は、エベレストプロの上にアウターを着ても良い製品なので、スキーの用途に合わせて使い分けができそうです。それにしてもこの暖かさは素晴らしいです。

CW-X GENERATOR MODEL HOT
CWX BASIC PERFORMANCE SECOND BODY 2.0
MICO MAN LONG SLEEVE MOCK NECK IN-7021 / 3/4 TIGHT PANTS CM-7024
ひだまり本舗
繊研新聞『健繊「ひだまり」肌着がヒマラヤから宇宙へ ISS内で着用計画』

S-B-B認定整備技術者セミナー 2023

今年も日本スキー産業振興協会(JSP)主催の7社合同開催 ISO11088に基づく『S-B-B認定整備技術者セミナー 2023』を受講することができました。このセミナーは毎年、スキーの安全性を確保する上で重要なビンディングのセッティングを行うことができる専門の講習会で、S-B-B認定整備技術者を認定しています。このセミナーは国際規格ISO110881に準じた取付・調整方法についてのセミナーで、実行委員会7社と取引のあるスキー販売点及び代理店の正社員、スキー場、スキースクール、レンタルショップの正社員、常勤講師、及びそれに準ずる者などに受講資格があります。SAJの有資格者も受講できます。講習はオンラインと対面講習から構成されていて、オンライン講習を受講後にテストとアンケートに答えて、合格すると認定されます。

ISO110881に準じた取付・調整方法についてのセミナーなので、アルペンスキーブーツ(ISO5355)だけではなく、グリップウォークブーツ(ISO23223)、ツアーブーツ(ISO9523)、などスキーブーツの多様化が進んでいますので、十分な知識を持って取り扱う上でも、その必要性はまずます高くなってきています。

ミツウマSB-815

  メレルのColdpack Ice+ Moc Waterproofを使っていたのですが、経年劣化で亀裂が入り使用不能になってしまいました。アウトソールに氷の上でも滑らないVibram Arctic Gripを使っているのが特徴で、車の運転もできて、凍った雪道でも対応できる靴として重宝していました。しかしラストが狭いのが難点で、ワンサイズ上でないと履けませんでした。それで新しいものを探したのですが、価格が高騰しているのか同型は販売されておらず、メレルのHPでは、ウィンター モック3という新しい商品がでていました。価格は17,600円です。アウトソールはVibram Arctic Gripではないですが、独自のスティッキーラバー アウトソールを使っています。このウィンター モック3もなかなか思うサイズが見つかりません。

スキーに行くとき履きたい靴の条件は、
①運転に支障がない
②着脱が比較的容易(ロングブーツ系対象外)
③氷上や雪道で滑らないソール
④靴底4㎝の防水

普段雪山に出かけるときは、これらの条件に合った靴を履き、車で現地に到着したら、靴を車載に入れておいた長靴に履き替え、深い雪の中を歩いたり、雪かきなどに使っています。長靴はもちろん滑りにくいタイプのものを使っています。

そこで以前から北海道小樽市に本社を置くゴム長靴の老舗メーカー株式会社ミツウマが気になっていたので、冬でも暖かく履けて、凍った路面でも滑りにくい、軽量のシューズがないか探していたら、2022‐2023新製品SB-815を見つけました。

ミツウマ SB-815
材質:ナイロン生地+合成皮革アッパー
   EVA+ラバー底
内寸:100㎜ 総丈/130㎜
重量:約360g(片足・L)
・男女兼用
・軽量設計
・ナイロン+合皮アッパー
・防寒起毛裏
・EVA+ラバー底
・防滑ソール(防滑意匠ソール)

ナイロン素材に合皮を組み合わせた片足325gと軽量で、撥水加工が施され、靴底2時間4㎝防水に対応し、「EVA+ラバー底」や「防滑意匠ソール」など地元メーカーで定評のある雪道対応ソール、防寒素材で足元が温かいのが特徴です。

車の中に入れておく長靴
スマック No.2044MU ブラック
防寒 防滑 ウレタン ラバーブーツ 冬用長靴 雪道 クリスマス防寒 滑りにくいのが特徴です。

参考
ミツウマ2022‐2023カタログ
http://www.mitsuuma.co.jp/catalog/cat2022-2023.pdf

 

群馬みなかみほうだいぎスキー場の魅力

世界有数のパウダースポット

 谷川岳は群馬・新潟の県境にある三国山脈の山で、周囲の万太郎山・仙ノ倉山・茂倉岳などを総じて谷川連峰と呼んでいます。日本海と太平洋の分水嶺となっている山で、冬は日本海を渡った冷たい風がたくさんの雪を降らせながらこの分水嶺にぶつかり、山越えして大雪をもたらします。そのため天候の変化が激しい場所でもあります。水上宝台樹スキー場は、宝台樹山の東側に位置しており、北斜面の標高(1400m)の高いスキー場なので、降雪が見込めるスキー場でもあります。非圧雪の急斜面が3本、深雪が楽しめるコースが3本別にある深雪の聖地とも言えるスキー場です。近年、日本海側の海水温が上昇しているため、温暖化している環境下でも、シベリアからの低気圧が南下すれば、大雪をもたらす場所でもあります。

オープンハウスグループが新規参入

 オープンハウスグループは、群馬県北部の観光の核である宝台樹(ほうだいぎ)スキー場の事業承継を行いました。旧宝台樹スキー場は、スキー人口の減少やコロナ禍などの影響で、2016年から20年まで5年連続で最終赤字を計上、経営不振が続く上、再投資も厳しい状況でした。オープンハウスグループが事業承継を実施、「群馬みなかみほうだいぎスキー場」と名称を変更し、2021年12月18日より新規算入しました。

「群馬みなかみほうだいぎスキー場」とは

 群馬みなかみほうだいぎスキー場の特徴は、大きく2つあります。1つは第8クワッドリフトのあるたんぽぽコース(1050m)と第6ペアリフトのあるファミリーコース(1110m)の緩斜面です。この緩斜面があるおかげで、スキーやスノーボーダーの初心者をはじめ家族でスキーが楽しめるコースになっています。緩斜面(10度)で1000mを超えるコースを2つ持っているスキー場はなかなか見当たりません。このため多くのスキー客を集客できる環境を持っています。2つめは、非常にニッチな世界ですが、第9クワッドリフト(1500m)で標高1400mの頂上まで上がると、谷川岳連邦を一望しながら、第9コース(680m)、第10コース(成平コース1400m)、第10コースと圧雪コースと非圧雪コースをセパレートした管理区域が滑れるほか、第7ペアリフトから最大斜度40度のイーグルコース(500m)、最大斜度32度のダウンヒルコース(750m)、最大斜度35度のパラダイスコース(680m)の非圧雪コース(滑走禁止区域)があることです。

時間差運航が生み出すパウダー三昧

 リフトの運航は、第6ペアリフトの運航が8時30分で、第9クワッドリフトの運航が9時、第7ペアリフトの運航が9時30分と時間差が設けてあります。この時間差運航が非常に重要で、これによりパウダーを求めてくるスキーヤーやスノーボーダーが非圧雪コースをまんべんなく滑れるという特徴があります。運行時間が同じだとリフト運航から1時間ちょっとでパウダーは滑りつくされ、悪雪に代わりますが、リフトの運航時間をずらすことで、より長い時間パウダーを味わえる機会が増します。この時間差運航は、今後も継続していくべきでしょう。

第7リフトの運休

 2023年シーズンはこの非圧雪コースの連絡リフトである第7ペアリフトを幾度となく「人員不足のため運休」とし、トップシーズンの醍醐味がなくなってしまいました。インバウンド需要を求めるのであれば、ニセコに匹敵する極上のパウダーを満喫できる群馬みなかみほうだいぎスキー場はかなりの需要があるはずです。しかしトップシーズン中、幾度となく第7ペアリフトを運休していると、誰も行かなくなるでしょう。もちろん天候不順による運休は仕方がないことですが、前日にならないと第7リフトが動くか動かないか、わからない状況を放置していることからすれば、インバウンドの需要も見込めなくなることを承知しておく必要があります。このスキー場の生命線ともいえる第7リフトが信頼されなければ、スキーやスノーボードの強者は確実に滑れるスキー場へ行ってしまいます。

簡易宿泊施設の設置とシャトルバスの連動

 ペアリフト4台の電気代は、例えば、500mペアリフトが100アンペアで運行され、電気料金が20円/kWhの場合、電気代(電気代(円) = 電流(アンペア) × 電圧(ボルト) × 時間(時間) × 電気料金(円/kWh))は、1ヶ月30日で3か月間リフトの運航を継続した場合、140万円/日なので、1億2600万円/基あたりかかります。クワッドリフトの場合はそれ以上で概ね2億5200万円/基かかります。宝台樹スキー場にはペアリフト4基、クワッドリフト2基ありますので、約10億円電気代がかかる計算になります。これに人件費を加えると、1シーズンの施設管理費と人件費の総額は約11億になります。

宝台樹スキー場の来場者数は、2022-2023シーズンは24万5463人でした。リフト代は大人1日券が5,100円で、週末の駐車場代1,000円と、レストランの売り上げを加えると、収入が概ね16億4000万円になり、売上高は約5億円前後になります。宝台樹スキー場の売上高は、2022-2023シーズンは約6億円でした。これは、前シーズンより約1億円の増加です。来場者が増えたことと食事などの値上げが収益に貢献したようです。

 宝台樹スキー場の特徴は、極上のパウダーを堪能できる環境と下部の緩斜面の豊富さによる初心者や初級者向けの広々としたゲレンデにあります。つまり、パウダー三昧を狙うコアなスキーヤーやスノーボーダーのための環境整備が必要で、ひとりでも滑りに来れるスキー場としての提案です。これはニセコモイワスキー場のロッジモイワ834のような新型のカプセル形式の簡易宿泊施設(軽朝食付)やトリフィートホテルのような簡易宿泊施設をセンターに設置し、シャトルバスで前日深夜到着、翌日ゲレンデ前から滑り出し、シャトルバスで帰るサービスがあれば、収益改善につながると考えます。都心で仕事終えて、東京駅9時前に新幹線で出発し、22時に上毛高原へ、シャトルバスで23時前には宝台樹スキー場へ到着できます。そうすれば朝一番の新雪を味わうことができるわけです。都心から2時間で新雪が滑れるスキー場は希少と言えそうです。

食事と休憩所の分離

 レストランと休憩所が分離した代表的なスキー場は、白樺高原国際スキー場です。白樺高原国際スキー場は、長野県北佐久郡立科町にあるスキー場で、晴天率の高いスキーヤーズオンリーのスキー場として有名ですが、センター上に畳敷きの休憩所があるのが特徴で、子供が疲れたり、お昼ご飯持参で休憩所でも食事ができるところが他のスキー場にない特徴です。休憩所のないレストランでは、食事の後にその場で休憩をするスキー客が少なからずおり、回転効率が悪くなるばかりか、レストランが常に混雑している状態になります。休憩所があれば、食事をした後、休憩所に移動するため、レストランの回転効率も上がり、からだを休める場所をスキー客は手に入れることになります。
 レストランでしか食事ができない、それも高額な昼食費用は、客離れを生みます。少なくないスキーヤーやスノーボーダーはお昼ご飯を持参し、雪上や駐車場の車の中で食べるようになるでしょう。これはどちらの側にとっても良い関係にはなりません。

スモーランドの設置

併せて、IKEAの子供の遊び場「スモーランド」のように、子供たちが安全に遊べるよう設計された滑り台、ブランコ、ボールプール、おもちゃなど、さまざまな遊具が設置されている遊び場で、専属のスタッフ(保育士資格・幼稚園教諭)が常駐することで、子供にやさしい、家族で楽しめるスキー場として再認識されるでしょう。雪の上で遊ぶのに疲れたら、スモーランドで子供を預かり遊ばせたり、お昼寝をさせたりします。親だけでスキーやスノーボードを短時間楽しんだりするときにも利用できます。欧州では、どこに行っても子供が遊べるように、こども中心、家族中心のインフラ整備が徹底しています。日本で導入しているスキー場は本当に数が少ないです。
 宝台樹スキー場のファミリーコースの中間地点には閉鎖されたレストランがあります。こうした場所をリノベーションして、休憩所として開放していくのも良いアイデアになるでしょう。

クラブ会員システムの導入

 宝台樹スキー場は週末には駐車場料金を1,000円徴収しています。この方法より、かたしな高原スキー場が実施している会員システムのように、ファミリー会員やシニア会員、パウダークラブ会員などを設置し、会費を3,000円(3年間有効)で、駐車場無料、各種特典を付ける方が収益性も良く、利用者にサービスを還元できます。
 仮に8万人の家族がファミリー会員になり、シニア会員やパウダー会員など延べ16万人の会員を集められれば、3年間の収益は概ね2億8800万円で、「人員不足による運休」などを解消する手立てになるものと考えます。
 
持続可能なスキー場

 経営側と利用者が互いに恩恵を受けられる持続可能なスキー場とは、スイスのグリンデルワルドなどのリゾート地を見ればわかりますが、誰でも、学生でも、家族でも、スキーヤーやスノーボーダーのレベルに関係なくどんなレベルの方でも、楽しめる環境づくりが必要です。お金を持ち合わせてない学生用にキャンプ場を設置し、テントで寝泊まりしながらスキーやスノーボードができる場を提供したり、民宿やペンションのように食事などのサービスを受けられる施設を利用したり、コンドミニアムのように食事は各自で経営側は泊まれる施設だけを提供したり、ひとりで来ても止まれて遊べるようにカプセル方式の宿泊施設があったり、雪の上で遊べる環境を作って行ければ、持続可能なスキー場として繁盛していくでしょう。

参考

ポリエチレンホットワクシング

無双シリーズを施工する前には必ず古いパラフィン系ワックス(他社のワックス)はリムーバー等で落としてから施工するようにしてください。滑走面の素材はポリエチレンをベースに作られており、無双はこの滑走面と同じポリエチレン素材をベースにしています。従って、ここにパラフィンが混ざる、もしくは下地にある状態となると密着性と強度が大幅に落ちてしまいます。

ポリエチレンホットワックスの特徴は、板が冷えていても施工が可能で、ベースワックスが不要、雪質を問わず、効果はパラフィン系の約20倍程度の持続性を誇り、滑走距離は約200㎞~500㎞と言われています。一般的に高価なイメージがありますが、他のワクシングと比べてみると意外な結果が出てきました。

まず無双は60gですが、使用回数を10回分として計算しました。持続日数は10日間として算出し1日当たりの単価を計算してみました。同様にイソパラフィンを利用したワクシングもパラフィン系のワクシングを1台当たり2.5g消費する計算で100gあたり約40台分と想定してみました。ベースワックスは10日間に1回の施工としています。

以下票の通りで、

GALLIUM BASE WAXをベースに、イソパラフィンで固形滑走ワックスを刷り込むと50円/日前後で済みます。GALLIUM BASE WAXをベースに、HAYASHI WAX RMU LQDを使うと170円/日かかります。無双とスーパー無双はパラフィン系のベースワックスを使わず単体で使うと、50円/日前後で済みます。

ベースワックスの下地の有無に関わらず、イソパラフィンでパラフィン系の固形ワックスを溶かして滑走面に刷り込むのが一番経済的です。イソパラフィンは、サーフボードのリムーバーなどで販売されているものを使えば安価に入手できます。これにブラシを購入するだけで対応できるのも利点です。

ベースワックスを定期的に塗る必要があるため、アイロンやスクレーパー、ベースワックス、ナイロンブラシなどチューンナップ道具が必要ですが、滑走性を重視しつつ、毎回の作業を短縮するのであれば、単価は高いですが、液体ワックスの選択肢もあるかと思います。但し機内持ち込みがNGなので、使用場所を選ぶかもしれません。

リムーバーで滑走面の汚れを落とした後、無双を施工することが大切です。140度のホットワクシングの直後にスクレ―ピングしなければいけないので、アイロン、カーボン製スクレーパー、ブラシなどのチューンナップ道具が必要ですし、ある程度の技量が必要になります。それさえできればブラシングをするだけで滑走性を確保できます。非常に硬いワックスで持続性もチームレスキューによるとパラフィン系の20倍、滑走距離で500㎞としています。シーズンの滑走日数が20日間程度なら一度の施工で通すことができます。それに滑走性を重視するのであれば、Z(プロ用親水系最高峰液体ワックス)を加えるのも選択肢の一つです。

無双の価格は一見高いように見えますが、1日当たりの価格で比較してみると、50円/日程度とイソパラフィンを使用する場合とほぼ同額で済む計算になります。

  • 無双 60g  4,980円(税込) 主成分:高耐久ポリエチレン
  • スーパー無双 60g 8,800円(税込) 主成分:最高級ポリエチレン

参考
無双・スーパー無双を施工しているお客様

イソパラフィンで溶かすワクシング

一般的なスキーのワクシングは、滑走面の汚れを取り除いたら、アイロンでベースとなる固形ワックスを溶かして、スキー板の滑走面に垂らし、アイロンでワックスを溶かしながら滑走面全体に染み込ませます。その後、ワックスが固まるまで放置して、余分なワックスをスクレーパーで取り除き、最後に滑走面をブラシングして仕上げていきます。ベースワックスで下地ができたら、温度や雪質に合わせて滑走ワックスを塗るのが一般的です。

すでに経験のある方はご存じかと思いますが、この方法だとワックスのカスが大量に出て、しかも滑走ワックスの持続性はあまり高くないので、何度も繰り返しホットワクシングをしなければいけなくなります。それに宿泊先にワクシングのできる場所があれば良いですが、ある場所はかなり限られているように思います。

そこでお金をかけることなく、手間のかからないワクシングの方法を紹介します。

まずパラフィン系のベースワックスで下地を作るところまでは、これまでと同様です。そのあとで、滑走面にイソパラフィンを刷毛で塗り、パラフィン系の固形滑走ワックスを滑走面に押し付けて刷り込みます。イソパラフィンとは、炭化水素系溶剤のことで界面活性剤の働きで油分を洗浄する性質があります。引火性液体なので注意は必要ですが、ほとんど無臭で人体への害も少ない溶剤です。サーフボードリムーバーなどには、イソパラフィンを主成分とするものがありますので、比較的入手しやすいかと思います。

イソパラフィンが蒸発(常温で20分前後)すると刷り込んだワックスが滑走面に定着します。あとはワクシングをするだけで完成です。下の絵は、イソパラフィンを塗った滑走面にパラフィン系ワックスを刷り込んだ状態です。このまま乾燥させてワクシングします。

〇GALLIUM(ガリウム) BASE WAX(SW2132) 100g 880円(税込) 主成分:パラフィン
サーフボードリムーバー 500ml 1,390円(税込) 主成分:イソパラフィン
〇GALLIUM(ガリウム) HYBRID BASE NF100 100g 2,200円(税込)  主成分:ノンフッ素

  • パラフィン系ベースワックスで下地を作ります。
  • 滑走面にイソパラフィンを刷毛で塗ります。
  • パラフィン系固形滑走ワックスを滑走面に刷り込みます。
  • イソパラフィンが蒸発し、小さな気泡を有するワックス構造体になります。
  • 20分前後で乾燥するのを待って、ブラシングします。

毎日固形滑走ワックスを刷り込まなければいけませんが、アイロンを使わないで、ワックスのカスも抑えられ、短時間に処理ができるのでお勧めです。

フッ素入りワックスの使用禁止について

FISレースにおけるフッ素(含むC8フッ化炭素/PFOA)入りワックスの使用禁止が再度延期となり、2023/2024シーズンからの実施となりましたが、SAJ(全日本スキー連盟)は2022/2023シーズンからのフッ素系ワックスの使用禁止の通達(2022/7/11)を出しています。8月31日通知内容の訂正と追加があり、C8/PFOAに限らずフッ素成分を含むすべてのワックスのFISおよびSAJ公認大会での使用を禁止としました。これを受けてSAT(東京都スキー連盟)は、FIS、SAJにならいフッ素成分を含むすべてのワックスを今シーズン(2022/23)より禁止対象にし、C8/PFOAはもちろん、PFOA を含まない C6、C4 タイプ等もフッ素系ワックスについて、すべて対象とするとしました。

禁止の目的は、「フッ素化ワックス、およびこれらのワックス製品を構成するペルフルオロオクタン酸(PFOA)化合物は、環境および健康への悪影響について科学的に研究されています。発癌性などがあり、人体はもちろん自然環境に有害です。スキー場が牧草地であれば夏に牛やヤギなどの牧畜が草と一緒にフッ素化合物を体内に取り込むことや、熱で気化し、人が吸い込むという危険性もあり得ます。具体的な健康への悪影響は、子供の出生体重の減少、糖尿病、または甲状腺代謝の乱れなどがあると言われています。」と記載されています。

そして、FISの決定に従い、SAJもSATもPFOA/C8の含有の有無に関わらず、禁止を指示しています。そして、「買わない」「もらわない」「そばに置かない」を会員間で互いに啓蒙し合い、フッ素系WAXの廃絶に向けて成果につなげていくことを要望しています。

このPFOAとは何なんでしょうか。

PFOAは、ペルフルオロオクタン酸(Perfluorooctanoic acid)の略称で、有機フッ素化合物の一種です。このPFOAの特徴は、水にはほとんど溶けず、界面活性能力が高く、生分解をほぼ受けない性質を持っています。そのため、スキーやスノーボードで使用されるワックスの中には、摩擦を減らしてスピードを出すために、この有機フッ素化合物が競技などで使われてきました。使用が禁止された理由は、PFOAが環境や人体に対して問題視されているPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)に属する化合物だからで、2020年にEUではPFOAの製造、使用は禁止されています。現在スキーワックスでこのPFOAは使われていません。スキーワックスで使われているフッ素は、PFC(ポリフッキサミン)やテフロンで知られているPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)です。しかし、どうもPFOAではないから安全というわけではなさそうです。PEAKSによれば、このPFCですら、環境や人体に深刻な影響を与える可能性があることから、アウトドアブランドのメーカーではPFCフリーへの取り組みが始めているそうです。

こうしてみると、フッ素系のスキーワックスは最終的には使用しない方向で考えなければいけないのは間違いないようですね。その意味では、スキー競技の世界だけではなく、一般のスキーヤーやスノーボーダーも使用しないように啓蒙していく必要がありそうです。併せて、今所持しているこれらのフッ素系スキーワックスの取り扱いについても考えなければいけません。総じてフッ素系ワックスはパラフィン系ワックスに比べて高価なので、即破棄というのは難しい選択になるかもしれません。

とりあえず整理してみると、
①PFOA化合物を含むフッ素系ワックスは使わない
②PFOAを含まないフッ素系ワックスも、使い切ったら買わない
③もしくはすべてのフッ素系ワックスは処分すべきというのであれば処分方法を提示すべき

フッ素系ワックスを処分する方法は、
●固形ワックスは可燃ごみとして処分
●ペースト状のワックスは、紙や布などの可燃物に塗り込み、紙パックなどに入れて捨てる
●液体ワックスは、紙や布などの可燃物に吸い取らせてから乾燥させ、紙パックなどに入れて捨てる
●液体ワックスは、水で溶かしながら下水溝に流す

フッ素系ワックスの処分方法は、車の固形ワックスの処分方法などが参考になりますが、各自治体の廃棄の仕方を参考にすると良いでしょう。

参考

SAJ各種教育関係資格の年次登録料の改定について

SAJ会員数予想
日頃より、本連盟の事業運営にご理解を賜り厚くお礼申し上げます。
「教育本部オフィシャルブック」は、長きに渡り、研修テーマ等の情報を本連盟から会員の皆様にお伝えする媒体として、時代に合わせ内容を変更しつつ出版会社から書籍として販売して参りました。しかし、昨今のインターネットの普及・発達により、皆様の利便性も考え「教育本部オフィシャルブック」の在り方を見直す時期になっておりました。本連盟において、慎重に協議し、その段階的措置として、今年度から「SAJ教育本部研修課題ハンドブック」と名称を変更し、本連盟が制作し無償配布するとともにWebにて配信することに致しました。その他、新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例措置として、研修会理論のeラーニング導入も既に始めております。

しかしながら、この改善にかかる費用を本連盟で全て賄うことは難しく、今年度から教育関係の下記の各種資格の年次登録料を、1000円から1500円に改定させていただきます。ただし、本件は、会員の皆様にのみ負担をお願いする訳ではなく、これまで書籍を購入していた費用が無くなり、研修会理論のeラーニング導入により、研修会場に行く必要が無くなることで、交通費の削減や時間的拘束の削減が見込め、総合して考えると会員様に大きな利点があると考えます。つきましては、何卒ご理解ご協力をいただきたくお願い申し上げます。「SAJ教育本部研修課題ハンドブック」は、10月下旬に各加盟団体に配布します。

 

SAJ教育資格の年間登録料が1000円から1500円に値上がりしました。教育資格なので指導員と検定員の2つの資格を持っていると1000円の値上げです。理由は、教育本部オフィシャルブックの出版物の廃止に伴うWeb配信への移行、研修会理論のe-ラーニング導入に伴う製作費、研修会などの交通費や時間的拘束の削減などから値上げをしたというものです。

SAJ会員の側から見ると、どのような理由にせよSAJ会員登録料で3000円、都連登録料で800円、都連SAJ有資格者年次登録料1000円、SAJ公認資格料(指導員)1500円、(検定員)1500円で、7800円これにスキー保険が入りますから、15,000円は超えてくることになります。さぞ退会する会員も多いのではないかと思うのですが、会員数の提示がありません。

 そこで、いくつか見つかった資料から推測してみました。1998年の会員数が16万人で2020年が7.6万人だそうです。この減少比率をグラフにすると毎年3%近く会員数が減っている計算になります。

SAJの「事業報告及び決算報告書」によると、「事業収益」「補助金」「協賛金」が3本柱で、補助金の比率は1/3程度です。 補助金は国から直接ではなく、JOC(日本オリンピック委員会)からが補助金全体の50%~60%、スポーツくじからが20%、FIS(国際スキー連盟)からが10%などとなっています。 ちなみに会費収入は収入全体の1割ほどです。

2022年度(令和4年度)の令和4年度事業計画及び予算書を見ると、現在会員数は資格者登録料(59,395,600円)、指導員公認料(7,505,000円)、準指導員公認料(7,951,000円)、競技者登録料(28,166,700円)で、3%減少し続けていると仮定すると、約7万人前後になります。

会員数は着実に減っているのが気になります。会員の財源は、全体の1割程度なので気にならないのかもしれませんが、収益の半分以上を担っているJOCが今や火の車、2020オリンピックは過去の大会の中でも群を抜いて不祥事が多い大会になってしまいました。今も尾を引いています。スノースポーツ人口は、1998年の約1,800万人から2016年には580万人まで減少しており、現在もなお減少しています。

今後どうなるかSAJの側から見ると、何としても冬季オリンピックやワールドカップでメダルが欲しいんですね。従って競技選手の登録料は据え置き、教育資格者の登録料は、資格維持にかかる経費が赤字にならない範囲内で、値上げをしていくでしょう。教育資格者の数はさほど多くないので、SAJ会員数が今の半分になっても、値上げ幅は極端に大きくなるとは言えないかもしれません。

スキー場再生にTバーリフトの活用

 スキー場の会計がなかなかWebで見つからないので何ともですが、新潟県魚沼市がスキー場事業特別会計をアップしています。これを見ると魚沼市が経営するスキー場は、小出スキー場、薬師スキー場、大湯温泉スキー場、須原スキー場、大原スキー場の5つで、この5つの会計が計上されています。小出スキー場はペアリフトが3基(800m)で、年毎にばらつきはありますが、1シーズンの使用料が概ね800万~1000万円です。この価格をさのさかスキー場のリフトに転用すると5基(3120m)で4268万円になります。

現在日本ではJバーリフト(単機型)とTバーリフト(2人用)を設置しているスキー場はなくなってきましたが、欧米ではまだ現役で利用されています。設置費用も概算ですが、1000mで機材代のみで5000万円~8000万年と、500m程度のペアリフトの建設費1億5千万円~2億円に比べても1/3程度で済ませることができます。

JバーリフトとTバーリフトは、どちらも電気を動力としています。単機のJバーリフトの最大運転電力は18kW、Tバーリフトの最大運転電力は32kWになります。リフトの電力レベルは、リフトの長さ、特定の消費レベル、および季節的な需要によって決まります。Tバーリフトは、スキーヤーとスノーボーダーの両方が利用することができ、通常3m/s前後で運転されますが、0,75m/sから3,5~4,0m/sまで運転することが可能です。

中部電力のkWh(キロワットアワー)の電気料金で1日8時間、30日間稼働させたと想定すると、1本当たりのリフトの電力が割り出せます。

18kw×8h×30日=消費電力 4,320kWh ×中部 30.57円/kWh= 132,062円/月
32kw×8h×30日=消費電力 7,680kWh ×中部 30.57円/kWh= 234,777円/月

さのさかスキー場のリフトは5本で、それぞれ第6ペアリフト(500m)、第1トリプルリフト(420m)、第2クワッドリフト(930m)、第3クワッドリフト(860m)、第5ペアリフト(410m)です。第5リフトは廃止し、第6と第3(2本)をJバーリフトに、第1と第2をTバーリフトに換装すると、87万円/月ですから3か月間で約270万円の電力に抑えられます。ヘアリフト5本を運用すると3か月間で約8250万円かかってしまいます。ペアリフト1台で550万円/月支出する計算です。

750kw×8h×30日=消費電力 80,000kWh ×中部 30.57円/kWh= 5,502,600円/月

2018-19シーズンのさのさかスキー場の来場者数は2.2万人でした。JバーやTバーリフトへの変更に伴い、リフト代金は3,000円(大人)で計算すると、リフト代の収益は、6,600万円になります。これに駐車場代、レストラン収益、休憩所料金、託児所の利用料、カプセルホテル宿泊料などを計上すると以下のような概算になります。

 
項目 金額 人数 収益
リフト代 ¥3,000 22000人 66,000,000円
駐車場 ¥1,000 5500台 5,500,000円
レストラン ¥800 22000人 17,600,000円
休憩所 ¥1,000 3500人 3,500,000円
託児所 ¥2,000 1400人 2,800,000円
カプセルホテル ¥6,000 10000人 60,000,000円
      89,400,000円
 
項目 支出
燃料費 2,700,000円
総務管理費 7,000,000円
索道事業費 40,000,000円
公債費 30,000,000円
予備費 5,000,000円
  84,700,000円

支出は市が管轄する複数のスキー場のデータから概算して求めたものです。
マーケットとしては、関東圏と東海圏それに関西圏にまたがる立地条件の良さがあるので、フリースタイル、モーグル、日帰り、子連れ、Tバーリフトをキーワードに見直せば、群馬県の片品高原スキー場のように運用できるのではないかと思います。

まずリフトの撤去作業とT/Jバーの設置費用、センターハウスの改修工事(託児所の新設など)、カプセルホテルの建設費などは含まれていません。冬場は改修工事ができないので、それまで運用するか延期して、改修工事に充当するかを考えたほうが良さそうです。

ツェルマットのテオドール氷河(3883m)に位置するリフトはゴンドラ以外はすべてTバーリフトです。標高が高く、風が強いので、Tバーリフトの方が優位なのでしょうが、リフトの考え方を少し変えれば活用できるかもしれません。

山の積雪を探るSnow-Forcast

snow-forcast

愛好家が愛好家のために作ったスキー場の天気予報で、世界中3200のスキー場の天気予報、積雪情報を、正確な山の気象モデルを使って、1日に4回更新するサイトです。snow-forcastの優れている点は、圧倒的に精度の高いスキー場の天気予報を、ボトムから頂上まで標高別に導き出してくれるところです。

アカウントを作成し、プレミアム会員になるとMysnow(私の雪)ページの設定ができ、良く滑りに行くスキー場を登録しておくことができます。プレミアム会員は1ヶ月($4.48)、6ヶ月($14.60)、12ヶ月($24.72)から選択できます。私は11月から6ヶ月のプレミアム会員に登録して利用しています。

プレミアム会員特典
・12日間予報
・バナー広告非表示
・毎時詳細
・アプリ雪アラート
・地形図のダウンロード
など多数の特典が用意されています。

実際の降雪予測は、snow-forecast.com のコンピューターを使用して行われますが、生の天気予報データはアメリカの National Weather Service (NWS) から取得されます。この種の組織としては世界最大で、これにNOAA や ECMWF などのデータを活用してパッケージングしています。

入力データには、Global Forecast System (GFS) 気象モデルを使用します。これらは、詳細で信頼性が高く、頻繁に更新されるだけでなく、航空計画を目的としているため、スキー場の標高毎の変化を正確に予報するのに役立っています。併せて、降水予報と組み合わせると、降雪予報を提供することができます。

自宅からスキー場までの移動の際や、地形と気象のインタラクティブな予報データをリアルタイムにWindyで掌握し、山の麓からスキー場まではsnow-forcastの情報で対応していくと、外れがないかと思います。

 

地形と気象が目でわかる天気予報サイトWindy

Windy

冬型の気圧配置の中でも、朝の早い時間、太陽が昇り上昇気流が山の斜面を覆う前であれば、パウダーを楽しめることがあります。

併せて、スキー場のコース内に非圧雪バーンを持つスキー場を選ぶことが大切です。決してコース外に出て滑らないでください。関東を起点にスキー場内で非圧雪バーンを持つスキー場は以外に近くにあります。それは群馬県と新潟県の県境にある中央分水嶺の谷川岳連邦の麓や武尊山の南東部にかけて標高の高いスキー場などは軽い深雪を楽しむことのできるスキー場です。

正確な気象予報があればそれだけパウダースノーを体験する確率も上がります。そのためには、きわめて正確な気象予報が必要で、これを可能にしているのがWindyとSnow-forcastです。

まずはWindyについて紹介しましょう。

Windy.com(ウィンディ・ドットコム)は、インタラクティブなリアルタイム天気予報サービスを世界中に提供するチェコの企業で、2014年にIvo Lukačovič(イヴォ・ルカチョヴィッチ)によって設立された会社です。リアルタイムの可視化された天気予報を10日先まで表示してくれる優れものです。パラメータも豊富なので、雨や雪、降雪や風の予測まで目で見て非常にわかりやすく表示してくれます。

2022年時点で利用されている気象予報データは、米国国立気象局(NWS)が運営する気象予報システムGFS(Global Forecast System)、ヨーロッパ中期予報センターの解析気象データを扱うECMWF(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts)、ドイツ気象局で天気予報のためのスーパーコンピューターを運用するDWD(Deutscher Wetterdienst)のデータをもとに制作されています。他にもNOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)による国立環境予測センターが運営する短期天気予報モデルNAM(North American Mesoscale Model)のデータやフランスの国家気象サービスMétéo-Franceの地域小規模気象予測モデルのAROMEも使われています。

これらの気象データを活用しているので、非常に精度の高い可視化された気象予報を見ることができるわけです。日本のみならず大陸の気圧の前線まで網羅した形で見ることができます。気圧配置を大雑把に掌握した上で、ピンポイントの地点の気象情報を見るのに、非常に役立つ情報になります。

天気予報の詳細なデータが事前に分かれば、現地に向かうときの気象情報を予測できますし、スキー場とその周辺の気象情報を数時間先や翌日までの気象変化を把握しながら雪山で滑るのであればリスクを回避して滑ることができます。

参考

Windy.com
GFS(Global Forecast System)
ECMWF(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts)
DWD(Deutscher Wetterdienst)
MeteoBlue
NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)
NEMS

 

高幡不動尊金剛寺でお祓い

outback

 スキーシーズン前に雪山で交通事故を起こさないよう高幡不動尊まで赴き交通安全祈願をしていただきました。高幡不動尊金剛寺は、関東三大不動の一つでもあり真言宗智山派別格本山で、ご本尊は不動明王、燃えさかる炎を背負い、怒りの形相ですべての人を導き、一切の災いを祓う力をもつといわれる慈悲深い仏なのです。お祓いをしていただき、運転時の邪心を払い、迷うことなく運転できるよう祈願してきました。

極渦崩壊の影響で冬型の気圧配置が強くなる

 気象庁の2022年12月から2023年2月までの長期予報では、冬の降雪量は冬型の気圧配置が強いため、東・西日本日本海側では平年並か多く、北日本日本海側では、ほぼ平年並の見込みであると予報しています。北極振動の予想は考慮されていないようですが、ラニーニャ現象が継続するという見込みで判断されているようです。

 平年より偏西風が蛇行し、冷たい空気が流れ込み、北米や欧州それに日本で大雪を降らせている原因について、北極圏で「極渦崩壊」が起きているとInside Climate NewsNOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)に詳しく解説されています。北極圏を取り巻く寒帯ジェット気流が、全体的に大きく南にぶれてしまい、中緯度地域にまで北極の寒気を送り込んでいます。そして現在、この極渦は2つに分裂しり異常事態が起こっているのです。日本列島もその影響を受けていると考えて良いかもしれません。日本海の海水温が上昇し、シベリアからの寒気が南下してくると、今まで以上に雪雲が発達し、山間部に大雪を降らせます。降雪が期待できるのは良いことではありますが、気をつけて行動しないといけないですね。

谷川岳は群馬・新潟の県境にある三国山脈の山で、周囲の万太郎山・仙ノ倉山・茂倉岳などを総じて谷川連峰と呼んでいます。日本海と太平洋の分水嶺となっている山で、冬は日本海を渡った冷たい風がたくさんの雪を降らせながらこの分水嶺にぶつかり、山越えして大雪をもたらします。そのため天候の変化が激しい場所でもあります。

水上宝台樹スキー場は、宝台樹山の東側に位置しており、北斜面の標高(1400m)の高いスキー場なので、降雪が見込めるスキー場でもあります。非圧雪の急斜面が3本、深雪が楽しめるコースが3本別にある深雪の聖地とも言えるスキー場です。

谷川岳天神平スキー場は谷川岳南東麓にある標高1500mのスキー場なので雪質も良く、田尻沢コースがオープンしていれば4000mのロングランが楽しめます。

川場スキー場は武尊連峰の高手山の南斜面に面したスキー場で、標高は1870mと高く、良質の雪量が多いスキー場です。中・上級者コースの比率が高く、ロングコース主体で最長3300mのロングランが楽しめます。

オグナほたかスキー場は、トップは1820mと高く、谷川岳、武尊山を越える乾いた風が良質な雪を降らせるスキー場です。頂上から3500mのロングクルージングが魅力的です。

武尊山の北側の尾根にある西山の東南斜面に開けているスキー場が、ホワイトワールド尾瀬岩鞍スキー場で、群馬県下でも大規模なスキー場になります。ゴンドラで標高1703mまで上がると西山ゲレンデがあります。ここのななかまどコースは中斜面で全長1.1㎞あるので、気持ちよく滑れます。

中央分水嶺から最も離れているのが丸沼高原スキー場ですが、白根山の麓にあり、標高1390mから2000mに位置する標高の高い良質な雪のスキー場です。標高が高い分、厳冬期は寒いですが、雪質は非常に良いスキー場です。シーズンの長いスキー場でもあります。